リスボンから日帰りで訪れることができるセトゥーバルのワイナリー巡りは、ポルトガルの豊かなワイン文化を体験する絶好の機会です。今回は、公共交通機関を利用して、Bacalhôa WinesとJosé Maria da Fonsecaの2軒のワイナリーを巡った体験をご紹介します。
- 1. 朝の出発:リスボンからセトゥーバルへ
- 2. Bacalhôa Winesでのワイナリーツアー&試飲体験
- 3. Taberna de Azeitãoでのランチ
- 4. José Maria da Fonsecaでのワイナリーツアー&試飲体験
- 5. セトゥーバルへの立ち寄り
- 6. まとめ:セトゥーバルのワイナリー巡りにかかった費用と所要時間
1. 朝の出発:リスボンからセトゥーバルへ
今回のワイナリー巡りのスタートは、朝7時半のリスボン・オリエンテ駅から。赤ラインのメトロに乗り、終点のSão Sebastião(サン・セバスティアン)駅へと向かいました。
そこから徒歩で約13分。Av. Calouste Gulbenkian通りにあるバス停から、Carris Metropolitana社の4730番のバスに乗車します。このバスは1〜2時間に1本程度の運行なので、出発前にGoogleマップや公式サイトで時刻表を確認しておくのがおすすめです。
私がこのルートを選んだ理由は、乗り換えのタイミングが比較的安定していたから。他のルートでは、乗り換え時間が極端に短かったり、逆に待ち時間が長すぎたりと少し不便でした。徒歩の時間は少しありますが、バランスの良いルートだと感じました。
念のため道に迷ったりしても慌てないよう、Googleマップで表示されたルートよりも一本早いメトロに乗るようにして、余裕を持って行動。こうして無事にAzeitão(アゼタイオン)地区の中心部に到着しました。
なお、宿泊先や出発時間によっては、もっと効率の良いルートが見つかるかもしれません。Googleマップを検索し、自分に合った行き方を見つけてくださいね。
2. Bacalhôa Winesでのワイナリーツアー&試飲体験
今回のセトゥーバル・ワイナリー巡りで最初に訪れたのは、1922年創業の歴史あるワイナリー「Bacalhôa Wines」。リスボンからバスで約1時間、自然豊かなAzeitão地区に位置しています。
到着して受付を済ませると、担当してくれたのはまだ20代前半ながらもワインの知識がとても豊富なスタッフさん。予約していた10:30の枠には私だけしかいなかったようで、贅沢にもマンツーマンでのツアーがスタートしました。途中からドイツ人のご夫婦が合流し、最終的には4人で和やかに見学を進めました。
ツアーはすぐにワインというわけではなく、まずはアンゴラの伝統工芸品の展示から始まります。現在のオーナーがかつてアンゴラに長く滞在していた経験があり、その際に収集したアートや工芸品を「訪れた人たちにもぜひ見てほしい」との思いで公開しているそうです。このアートの見学はさらりと、数分でワインエリアへ移動します。
次に案内されたのは、ワインの熟成に使われる樽が並ぶ壮観なセラーエリア。ここでBacalhôaのワインづくりに関する説明を受けました。とくに印象的だったのが、看板商品である甘口ワイン「モスカテル・デ・セトゥーバル」について。
このモスカテルは、ボトルの最大半分が糖分という驚きの甘さを持ち、最低でも5年、長いものでは9年かけて熟成されます。全体の生産量のうち約30%が海外へ輸出されているというのも、このワイナリーの規模を物語っています。
スタッフの説明はとても丁寧で、英語がそれほど得意でなくても理解できるように、わかりやすく話してくれます。質問にも気さくに答えてくれるので、モスカテルに興味がある人はどんどん聞いてみるのがおすすめです。
そしてお楽しみのワイン試飲タイム。この日は3種類のワインをいただきました。
- ロゼワイン:まずは軽やかでフルーティーなロゼ。華やかな香りが印象的です。
- 赤ワイン:続いてはほんのり甘みを感じるライトボディの赤。オーク樽の香りがふわりと広がります。
- モスカテル:最後はお待ちかねのモスカテル。キャラメル、ドライフルーツ、ハチミツのような濃厚な香りと味わいで、デザートワインとしてもぴったりです。
ツアーの終盤には、スタッフの方がモスカテルの楽しみ方をひとつ教えてくれました。
「チョコレートケーキを薄くスライスして、その上にバニラアイスをのせてください。さらにオレンジピールとレモンピールをトッピングして、最後にモスカテルをひと回し。これが最高なんですよ」
聞いただけでワイン好きにはたまらない、大人の贅沢デザートです。モスカテルの魅力を五感で体験できる、心に残るワイナリーツアーでした。
3. Taberna de Azeitãoでのランチ
Bacalhôa Winesの見学と試飲を終えたあとは、Azeitãoの地元レストラン「Taberna de Azeitão」へ足を運びました。ワイナリーからは徒歩約15分、緑豊かな葡萄畑の景色を楽しみながらのんびり歩ける距離です。
このレストランは、旅行前にチェックして気になっていたお店。地元の人々にも愛されているようで、落ち着いた雰囲気の中に温かさが漂っていました。
この日のランチに選んだのは、日替わりメニューにあった「バカリャウ・ア・ブラス(Bacalhau à Brás)」。ポルトガルの定番料理で、干しダラを細かくほぐし、卵とじゃがいもでふんわりととじたものです。塩気がちょうどよく、ワインと合わせて楽しむのにぴったり。しっかりとした味わいなのに重たさはなく、フォークが止まらない美味しさでした。
そして、食後のデザートには「Tarte de Azeitão」をいただきました。地元の伝統的なスイーツで、見た目は小ぶりながらもしっかりと甘みのある一品。バニラアイスとの組み合わせが絶妙で、温かみのあるケーキと冷たいアイスのバランスがたまらない美味しさでした。
スタッフの方々もとても親切で、英語を話せる方は一人だけでしたが、その他のスタッフとも翻訳アプリ(DeepL)や身振り手振りを交えて問題なくやり取りができました。言葉が完全に通じなくても、笑顔と優しさでしっかり対応してくれるあたたかいお店です。
4. José Maria da Fonsecaでのワイナリーツアー&試飲体験
午後に訪れたのは、1834年創業の老舗ワイナリー「José Maria da Fonseca(ジョゼ・マリア・ダ・フォンセカ)」。ポルトガル国内でも特に歴史のある名門ワイナリーのひとつで、予約時間は14:30。扉が開くのは5分前とのことで、すぐ隣にあるショップ(試飲もここで行われます)で時間をつぶしながら、他のツアー参加者の到着を待ちました。
この日のツアー参加者は私を含めて13名。ゆったりとした規模感のなか、スタッフによる丁寧な説明を聞きながら、葡萄畑やワインの貯蔵庫を見学していきます。
José Maria da Fonsecaは、2025年5月現在7代目が家族経営を続けているワイナリーで、日本を含む70カ国以上にワインを輸出しているとのこと。生産量も多く、最大で1時間に3万本のボトリングが可能という設備を備えているそうです。
見学の中でも特に印象に残ったのが貯蔵庫です。中は非常に暗く、かろうじて足元が見えるほどの照明のみ。静けさのなかに、100年以上熟成されてきたモスカテル(Moscatel)の樽がずらりと並び、その光景からはまさに「歴史の重み」を感じ取ることができます。ちなみに、この貯蔵庫にはこうもりが住み着いているとのことで、自然との共存が今もなお続いているのも面白いポイントです。
ツアーの最後は、お楽しみのプレミアムワイン4種のテイスティング。白1種、赤2種、そしてモスカテル1種という構成で、それぞれ個性の異なる味わいを堪能できました。
- 白ワイン(ドイツ品種):とにかくドライ。スッと抜けるような軽さで、しっかりした酸味の中に、ほんのりと葡萄の良い香り。口に含んだ瞬間に「ちょっと苦い?」と感じるほどのキリッとした味わい。
- 赤ワイン(ポルトガル品種3種ブレンド):ドライ系ですが、香りは華やかでフルーティー。飲みやすさは1杯目の白ワインよりも軽やかで、バランスが良い印象。
- 赤ワイン(ヤングタイプ):深い赤色が印象的。香りはチェリーやベリー系がぐっと前に出ていて華やか。若いワインらしくタンニンは控えめながら、口の中にふわっと味が残るタイプ。余韻も楽しめました。
- モスカテル:文句なしのハイライト。5年熟成。アルコール度数17.5%とは思えないほど、フルーティーで飲みやすいデザートワイン。香りがふわっと立ち上がり、キャラメルやドライフルーツのようなやさしい甘さが口に広がります。 「たくさんは飲めないけれど、これは美味しい…!」と素直に思える1杯でした。
5. セトゥーバルへの立ち寄り
ふたつのワイナリーを巡ったあとは、少し時間に余裕があったので、そのままセトゥーバルの街まで足をのばすことにしました。José Maria da Fonsecaからはバスでおよそ30分です。
セトゥーバルは、観光地というよりも地元の暮らしが息づく港町。海辺をぶらぶら歩いたり、街並みを眺めたりしていると、ガイドブックでは味わえないポルトガルの日常を感じることができます。
実はこの街の名物はイカのフライ(choco frito)なのですが、ランチでお腹がいっぱいだった私は今回は見送り…。次回はぜひトライしたいと思っています。
のんびりとした散策を終え、17時発のバスに乗ってリスボンのオリエンテ駅へ。到着は18時前。こうして、1日がかりのセトゥーバル日帰り旅が無事に終了しました。
6. まとめ:セトゥーバルのワイナリー巡りにかかった費用と所要時間
今回のリスボンからの日帰りセトゥーバル・ワイナリー旅は、公共交通機関を使って自力で巡るプランでしたが、費用を抑えつつ大満足の1日になりました。
かかった費用は以下の通りです:
- メトロ&バスの移動費:1回2〜3ユーロ×4回でおよそ8〜12ユーロ
- Bacalhôa Winesのワイナリーツアー:試飲3種付きで6ユーロ
- José Maria da Fonsecaのツアー:試飲4種付きで15.50ユーロ
- ランチ(飲み物+メイン+デザート+チップ):21ユーロ
合計費用:50.50〜54.50ユーロ程度
朝7時半にリスボンを出発し、帰ってきたのは18時前。所要時間は約10時間の充実した1日でした。
ちなみに、GetYourGuideなどのツアー会社を利用すると、同じような内容のワイナリーツアーが175ユーロ〜で申し込めます(※ランチは含まず、移動・ツアー代込み)。
ツアーの良さは、全て手配済み&送迎つきでスムーズに観光できること。時間のない方や、旅慣れていない方には安心です。
一方で、自分のペースで回りたい人、予算を抑えたい人には個人手配の旅もおすすめ。バスの本数が少ないなどの難しさはありますが、その分、地元の空気に触れることができる貴重な体験になります。
どちらの方法にも良さがあるので、自分の旅のスタイルに合った選択をして、セトゥーバルのワイナリー巡りをぜひ楽しんでくださいね。
*おまけ*